認知症の親を介護していると、このまま症状が進むと、親の様子がどう変わっていくのかが分からず、不安が大きくなっていく方も多いようです。
親が目の前にいるのに、かつての親はいなくなっている・・・。
このような状況をアメリカの心理学者のポーリン・ボス博士は、「あいまいな喪失」と呼びました。
死別など明らかな「喪失」とは違い、相手が身体的に存在しているけれど、心理的には存在しない、という状況です。
「喪失」という事実があいまいだからこそ、未来への不安が強く、気持ちを切り替えて前に進むことが難しいのです。
認知症の人を介護する家族は、この「あいまいな喪失」に対応していく必要があります。
大切なのは、あいまいさを受け入れることです。
「〇か△か」とはっきりさせるのではなく、「〇も△も」と考えるのです。
例えば、「介護か仕事」とどちらかを選ぼうとするのではなく、「介護も仕事も」ととらえる。
「怒る母を穏やかな母に変えよう」ではなく、「母は怒る時も、穏やかな時もある」と考える。
そして、介護する自分自身のことを「優しいばかりではなく、怒ることもある」と思うことです。
つまりは全てを受け入れることになります。
昔の健康な状態に戻って欲しくて必死になりがちですが、昔も今も自分の大切な家族なんだと思うことが大切です。
「相手への 今も昔も 受け入れる」
アイゼン、心の俳句・・・。